「患者不在」の報道記事

機器を使い回さない歯科を探すには(yomiDr. 2017.7.7)

「ハンドピースの使い回し」など、医療機関としてあるまじき行為だし、20年以上前から問題視されていた。対策に消極的だった厚労省と日本歯科医師会の姿勢は「不作為」でしかない。
昨年、この問題で私の取材に応じた、日本歯科医師会の幹部は「患者ごとにハンドピースを交換していない場合でも、空回しをしてアルコールで拭き取るなどの対策はしている」と発言した。
いつの時代の話ですか、と言いたい。
日本歯科医師会に、プロフェッショナルオートノミー(医療者の専門的自律性)が機能しているならば、コストなどの言い訳をする前に、会員の歯科医師にスタンダードプリコーションを義務付けるくらいはするはずだろう。

歯科用ハンドピース
唾液や血液がついたハンドピースの使い回しが起きている(C)M.IWASAWA

また、厚労省が設けた「外来環」の施設基準自体も、一見すると感染対策のように見えて、AEDの設置を義務付けたりするなど、関連市場の拡大を目的にしているのではないか、という疑いをもたれても不思議ではない。
感染予防が進まないのは、厚労省と日本歯科医師会という二つの組織が、サボタージュしているからだ。
その責任を明らかにすることが、対策を進める最も大きな原動力になる。
だが、それをしないのは、批判すると何らかのハレーションが起きる可能性があるからだろう。
巷の開業医からの文句は、面白おかしく紹介しておきながら、敵に回すと怖い日本歯科医師会や厚労省の怠慢には言及しない今回の記事は、視点がズレているし卑怯だ。
日本の歯科業界も大手新聞社も「患者不在」なのだ。