12日、横浜で行われた「がん撲滅サミット」で、今最も注目を集めている、近赤外光線免疫治療法=通称「光免疫療法」の研究者・小林久隆医師が講演を行った。 約10分の動画にまとめたので、ご覧いただきたい。
「光免疫療法」はアメリカの臨床試験で、15例中14例で、がんが30%以上縮小、そのうち7例で、がんが消えた。医学用語では、奏効率93%、完全奏効率47%となり、驚異的な成績である。
ただし、現時点では少人数の患者を対象にしたフェーズ1(※)なので、今後の大規模な臨床試験を冷静に見守りたいが、進行がんの治療を大きく変える治療法として期待が高まる。
一方、日本の詐欺的な免疫細胞療法は、いつまでも本格的な臨床試験を実施しようとしない。本当に「効く」なら、臨床試験で有効性を示すことは可能であるし、第三者が検証できる再現性が備わっているはずだ。
自由診療のクリニックによる「独自」の免疫細胞療法を検討している患者や家族がいたら、どうかその矛盾に気づいていただきたい。
「光免疫療法」は、日本でも年内に臨床試験を開始する準備がされている。
光免疫療法が承認された暁には、巷の詐欺的な免疫細胞療法は一掃されるはずだ。
有効性がないことが白日に晒されるわけだから、莫大な損害賠償請求と、刑事罰の可能性も出てくる。
小林医師は、医療経済についても言及した。
「がんは、患者ごとにそれぞれ違う。本当はパーソナルメディスン=個別化医療をやったほうがいい。だけど、それをやると多大な医療費がかかる。 できれば、一つの薬で多くの患者を治療でき、うまく個別医療にもなっている。ということを唯一実現できるのが、光免疫療法だと考えている」
日本の保険制度を想定して光免疫療法の研究を進めていると、小林医師は講演で明らかにした。
オプジーボやC型肝炎の新薬など、最近の薬は極めて高額になっている。
製薬会社は研究開発費を理由にするが、このままでは公的保険制度は維持できなくなるだろう。
「光免疫療法」の費用がどの程度になるのか、まだまだ未知数だが、小林医師の研究理念を信じたい。
※「フェーズ1」=第1相臨床試験のこと。新薬や新たな機器や治療法について、10〜20人を対象に、安全性や最適な用法・用量を確認する。臨床試験は厳格な条件を満たした上で行われるが、それでも臨床試験の段階で確認出来なかった副作用などが、市販後に判明する場合もある。
また、一般的に少人数を対象にした臨床試験では、効果が期待できる患者が選ばれる傾向があるといわれる。