医療界、そして法曹界のモラルハザード

免疫チェックポイント阻害剤・オブジーボをめぐる問題について、ロハス・メディカルの川口 恭氏が核心を分かり易く解説しているので、ぜひご一読いただきたい。

『難民と医療不信が大発生 オプジーボの光と影②』
[市民のためのがん治療の会 シリーズ・がん治療の今]

自由診療の免疫治療クリニックは、進行がんの患者をターゲットにした悪徳ビジネスに等しい、という声を患者家族から聞いた。追い込まれた患者の心理につけこんで、効果が立証されていない治療で莫大な費用を請求するからだ。
国がん医師や大学教授たちが、こうしたクリニックに名を連ねているが、良心はまったく痛まないのだろうか?
川口氏によると、いま「オブジーボ難民」が免疫クリニックのターゲットになっているという。
この状況を放置すべきではない。

イレッサに関するメディアの報道が、現在の抗がん剤治療をミスリードしたという川口氏の指摘に、苦い記憶が甦る。
「薬害」という言葉が裁判に利用されたことで、厚労記者たちは問題の本質を見誤って伝えていた。
2011年10月、私は報道番組で、イレッサがEGFR遺伝子変異の患者に効果が実証されたこと、新薬の早期承認には予測できない副作用のリスクが伴う現実を伝えた。 当時、イレッサの副作用を強調する報道一色だった中で、上司の番組責任者にとっては勇気ある決断だった。
イレッサ訴訟の原告団は、私の報道に抗議を寄せ、偏向している、人権侵害だとして、BPOに申立てを行った。
高裁で逆転敗訴した原告団は、人格否定ともいうべき批判を繰り返して、取材者に問題があったというBPO裁定を引き出したが、自分の報道に後悔はしていない。
だが、私の力不足で、抗がん剤治療の迷走を食い止めることはできず、報道現場の萎縮を招いてしまった。