【動画】スキルス胃がん患者と家族からの伝言

3年前の9月、横浜の会議場で轟哲也さんに初めて会った。
その頃、彼は紅光(べにみつ)というハンドルネームで、スキルス胃がんの闘病生活をブログに記していた。
毎年欠かさず、東京渋谷区の胃がん検診を受けながら、スキルス胃がんが判明した時は、完治が難しいステージ4。
戸惑いや怒りの気持ちを抑えながら、轟さんはスキルス胃がんの治療情報を調べ、患者同士のネットワークを築こうとしていた。

横浜で日本癌学会の市民向け公開講座が行われる日、轟さんは患者同士の交流をしませんか、とブログ内で呼びかけた。
当時、僕は胃がん検診問題をテーマに取材をしており、患者ではないことを明かした上でお会いしたいと連絡したところ、快諾してくれた。
優しい笑顔が印象的で、実直な人柄だと感じた。抗がん剤の治療中だったせいか、顔色が優れないと感じたので、挨拶程度の話でその日は別れた。

スキルス胃がん患者会・轟哲也さん
スキルス胃がん患者・家族の会を立ち上げた轟哲也さん。毎年バリウム検査を受けていたが、発見されたときはステージ4のスキルス胃がんだった。(C)M.IWASAWA

そこから轟さんと僕のお付き合いが始まり、その後、彼は妻の浩美さんや仲間と一緒に「希望の会」というスキルス胃がん患者家族会を作り上げた。
スキルス胃がんは、若い世代の人にも発症して、轟さんのように発見された時には完治できない段階にまで進行しているケースが目立つ。
患者の方々に話を聞くと、スキルス胃がんの名前は知っていたが、まさか自分がなるとは思っていなかったという。
また、医療現場では、スキルス胃がんを早期発見するのは極めて難しい、と認識されており、検査で見つからなくても仕方ないという風潮も強い。 しかし、診断能力の高い内視鏡医が早期のスキルス胃がんを発見して、命を救っている事実もあるのだ。 進行したスキルス胃がんの治療は困難を極めており、信頼できる情報は極めて限られていたが、「希望の会」によって患者同士の交流が生まれ、情報交換ができるようになった。
さらに厳しい闘病を支える家族同士が、互いに励ます動きも生まれた。
希望の会は、今では文字通りスキルス胃がん患者や家族の希望となっている。 轟さんのことは拙著や関西テレビのザ・ドキュメント、BS-TBSの報道番組で紹介させてもらい、胃がん検診の問題点を指摘してきたが、まだ抜本的な改革には至っていない。

轟さんは、いつの間にか僕に友人として接してくれるようになった。去年8月、轟さんは他界した。
もっと話をしたかったが、闘病しながら多くのマスコミ取材に対応していることを知っているので、つい遠慮して機会を逃してしまった。
希望の会は、妻の轟浩美さんが引き継ぎ、今年4月には認定NPO法人となった。
今後も、スキルス胃がんの患者と家族にとって、大きな支えになっていくと思う。

「知ってください、意識してください、スキルス胃がん」
「知ってください、意識してください、スキルス胃がん」(C)M.IWASAWA

そして、「スキルス胃がんの早期発見」という哲也さんの願いを実現するため、今日からメッセージ動画の配信が始まった。
その願いを反映させたTシャツが広告クリエイターによってデザインされ、希望の会メンバーたちが着用して想いを語る。
僕は、そのメッセージ動画の撮影と編集を担当させてもらっている。第一回の配信は、轟哲也さん、妻の浩美さん、そして現在闘病中の上山美奈子さん、雅之さん夫妻からのメッセージ。
多くの方々に、ぜひご覧いただきたい。

【希望の会からのメッセージ】VOL.1 前理事長 轟 哲也
【希望の会からのメッセージ】VOL.2 理事長 轟 浩美
【希望の会からのメッセージ】VOL.3 上山美奈子・上山雅之