がん治療の未来は、本当にバラ色か?

未来世紀ジパング「大きく変わる がん治療最前線」2018年5月16日放送

16日夜にテレビ東京でOAされた「未来世紀ジパング」では、ダヴィンチ(手術支援ロボット)や、重粒子線治療、オプジーボ、光免疫療法などの最新がん治療が紹介された。

これまで数百万円が必要だった高額な治療が、次々と保険適用になり、高額療養費制度によって最高約10万円ほどの自己負担で済むことを伝える内容だ。
ゲスト解説者は「がんは治る。将来的に必ず治る病気になると思います」と語った。
あまりに無邪気で、無責任な言葉だと私は思う。

保険適用になった高額な治療費のカネは、天から降ってくるわけではない。
日本は、少子化によって税収の縮小が避けられない。医療費が膨らんでいくことは、次の世代の負担をどんどん重くすることを意味しているし、場合によっては国家財政を破綻させてしまう恐れすらある。
このような体制は、持続可能とは言い難い。

もちろん、富める者だけが最新医療の恩恵を受けることができる社会は歪であり、目指すべき未来ではない。
忘れてはならないのは、最新のがん治療機器や医薬品には、莫大なカネが投入される一方、「人」にはカネを回さないという現実だ。
だから、医師不足は解決しないまま、医療現場は少ないスタッフで長時間勤務を今も強いられている。
私は様々な職業の人々を取材してきたが、勤務医ほど一個人で過重な責任を負い、異常な長時間労働を強いられている職種はなかった。

限られた国家予算の枠の中で、高度な医療をどこまで追求するのか、私を含めたシニア世代が若者たちに負担をかけるばかりでいいのか、という議論が必要だ。
正解を見つけるのは難しいが、医療というものは、企業利益が優先される市場原理に委ねてはならないと思う。