週刊ポスト短期集中連載・歯医者のタブー 第2回「歯周病」

新書「やってはいけない歯科治療」のスピンオフ企画、第二回は「歯周病で歯を失う本当の理由」。
歯周病は、細菌の感染で歯肉に炎症が起きて、歯を支えている〝骨が溶ける〟感染症です。進行すると、最悪の場合は抜歯しなければなりません。
怖い歯周病ですが、基本治療は実にシンプル。
歯周ポケット内に潜む細菌(バイオフィルム)の除去と、患者自身の口腔ケアです。
それなのに、歯周病が日本人の抜歯原因・第1位なのは、なぜでしょうかー

「虫歯がない人は、歯周病にならない?」は、多くの人が陥りがちな誤解のようです。
初期の歯周病は痛みもないので、治療するタイミングを逃してしまい、進行してからようやく気づき、抜歯が避けられないという悲劇が起きているのです。

歯周ポケットの深さをはかる検査。この時、出血の有無も同時に確認する。炎症が起きていると痛みを感じることもある。(C)M.IWASAWA

歯周病の診断は、歯周ポケットの深さ(プロービング)、出血の有無、動揺度、レントゲン画像などの検査を総合的に判断します。
しかし、鍵を握る歯周ポケット検査や、治療までが〝手抜き〟されていることが、歯科医や複数の歯科衛生士の証言で分かりました。

一部の歯科医たちによる〝間違った情報の発信〟も目立ちます。
代表的なのは「歯茎マッサージ」。血行が良くなって歯周病が改善する、として本などで積極的に勧める歯科医が少なくありません。
それは「錯覚」でしかない、とスウェーデン式歯周病治療の指導者・弘岡秀明氏は指摘しています。

「予防歯科」を掲げる歯科医院に、5年ほど通院していた60代男性が、いつのまにか歯周病が進行。ドミノ倒しのように、どんどん歯を抜かれて、上顎が入れ歯になったケースを取材しました。
一方で、70代の女性が、基本歯周治療と徹底した口腔ケアで、重度の歯周病から回復したケースもあります。
太田由美氏(日本臨床歯周病学会・認定歯科衛生士)は、適切な治療と口腔ケアで、大半の歯周病は改善するので、諦めないでほしいと言います。

ただし、気をつけてほしいこともあります。
「予防歯科」を前面にアピールする歯科医院が増えてきていますが、実は特別な資格や試験は特にありません。したがって、歯科医や歯科衛生士のスキル、診療姿勢には、雲泥の差があるのです。
厄介なのは、経営コンサルタントが「予防歯科のビジネスモデル」を、歯科医に勧めていること。
「予防歯科」で患者を呼び込み、定期的に通院させる習慣を患者につけてから、「セラミック」や「高額なマウスピース矯正」など、利潤が大きい「自費診療」を売り込む方式です。

もう一つ、注意してほしいのが、薬を使った歯周病治療。
口腔細菌の研究で知られる、奥田克爾氏は(東京歯科大・名誉教授)、基本的な歯周病治療をサボり、抗生物質を長期にわたって患者に服用させるケースを厳しく批判しています。
患者に耐性菌ができ、いざという時に薬が効かないという事態が起きたら、安易な治療を行なった歯科医は、重い責任を問われるでしょう。

患者は、歯科医の誠実さを見極める目を持たないと、自分の歯を守れない時代なのかもしれません。
そのヒントをお知りになりたい場合は、週刊ポスト・6/11発売号、そして新書「やってはいけない歯科治療」をご覧下さい。